以前、RPLでシェフ資格を取った話を書きましたが、そもそも「オーストラリアのシェフ」と一口に言っても、働く場所によって給料も仕事内容も全然違います。今回は私が実際に働いた、または同僚や知り合いから聞いた話をもとに、シェフの働き方を6つのタイプに分けて、給料相場と仕事内容、メリット・デメリットをまとめてみます。

シェフってどこで働いても同じような仕事だと思ってた。

全然違うよ。同じ「シェフ」でも、カフェとファインダイニングとマイニングキャンプじゃ、給料も働き方もまるで別の仕事みたいなものだからね。
この記事の給料は、公的な統計や求人票の集計ではなく、私自身の経験と、同僚・知り合いから聞いた話をもとにした「体感の相場」です。年俸表記はフルタイム正社員(Permanent)ベース、時給表記があるものはカジュアル(Casual)雇用のレートを含んでいます。実際の給料は経験年数・お店の規模・地域(都市部か地方か)によって上下しますので、あくまで目安として見てください。

カフェ
給料の目安:年俸$55,000〜$75,000
朝5時〜7時の間に出勤するのが基本。カフェはランチタイム過ぎ、だいたい14時くらいまでの営業が多いです。調理内容自体は難しくなく、一度経験すればどこのカフェもだいたい同じ感覚でこなせます(もちろんメニューにもよります)。小さいカフェだとキッチンは1〜2人、中規模だと3〜4人で回すのが一般的。営業中はずっとお客さんが入っているので、注文をさばきながら同時にプレップ(仕込み)もこなす必要があり、実はかなり忙しい仕事です。週替わり・月替わりのメニューを出す店が多いので、自分のアイディアがメニューに反映されやすく、そこにやりがいを感じる人も多いです。カフェと聞いて若者にインスタ映えするお店とかを想像しますが、基本オーストラリアのカフェは高齢者の憩いの場となっていることが多いので、リピーター率がかなり高く50%が常連と言っても過言では無いです。(オージーの朝は早い)そのため個人の好みのオーダー、例えばbacon cook dead, no sauce, no dairy, no tomato, hard poached eggs…とか、毎日来る人も多いので、常連さん対応が必須です。
メリット
- 夜は完全に自由。14〜15時には仕事が終わるので、プライベートな時間を確保しやすい
- 常連が多いので、直接お客さんと会話しなくても親しみが沸きやりがいを感じる
- 比較的スキルがあまりなくても雇用される可能性が高い
- おしゃれなカフェで働きたい場合はいい
デメリット
- 客単価が低いぶん、働く人が少人数になりがち。お店の売上も伸びにくく、給料もそこまで大きくは上がらない
- 週末は出勤必須。オーストラリアはブレックファースト文化があるため、ファミリーの誕生日やイベントでブレックファーストに来る人は大人数のグループが多い。当日のメニューオーダーが多いので、準備しにくくサービスに時間が掛かる
- 給料が高めに設定されているカフェは、とんでもなく忙しい場合が多い

カジュアルレストラン
給料の目安:年俸$60,000〜$80,000
昼・夜の両方を営業する店が多く、夜のみ営業の店も一部あります。週末の出勤はほぼ必須。個人経営の店は定休日が固定されている分、シフトも固定化しやすい傾向があります。中〜大規模店は人数が多いぶん、休みの調整がしやすいのがメリット(代わりに入れる人がいるので)。忙しい店では昼シフト・夜シフトをきっちり分けているところもあります。フランチャイズ系はレシピがあらかじめ決まっているので、自分のアイディアを出す余地は少なめ(これはカフェも同様)。メニュー変更も頻繁には行われないので、同じ作業の繰り返しになりやすい面もあります。
最近の物価高もあり、価格設定がやや低めの店は繁盛しており、Uberやテイクアウェイ需要も多い。
補足すると、昼夜営業の店では、ランチとディナーの間に2〜3時間のロングブレイク(休憩)が入るのが一般的です。この間、一度自宅に帰る人もいますが、その場合は交通費が余計にかかってしまうのが地味に痛いところです。店で休憩する人や、私用を済ませる人も居ます。
メリット
- 和食・イタリアン・韓国料理など専門ジャンルの店が多いので、一つのカテゴリーを掘り下げたい人には技術を習得しやすい
- 特別な技術が無くてもある程度のキッチンの経験があれば雇って教えてくれる場所は多い
- 自分のお店を出したい人には向いている
デメリット
- 昼夜通しで働くと、自分の時間が確保しにくい(休憩時間が長いので一日を通しての拘束時間が長い)
- 一通りメニューを覚えてしまうと、同じことの繰り返しとなり、あまり成長が感じられなくなる
- フルタイムの場合、オーバーワークになりがち

パブ
給料の目安:年俸$70,000〜$85,000
働き方はほぼカジュアルレストランと同じで、昼夜勤務が基本です。
オーストラリアのパブは、日本の居酒屋のような「お酒メインの大人の場所」というより、家族連れも普通に夕食を食べに来る場所。どこもキッズメニューがあります。パブごとのメニューの違いはあまりなく、8割方何処も共通しています(ステーキ、チキンパルミ、スニッチェル、フィッシュ&チップス、バーガーあたりが定番)。
メリット
- 一度パブで働けば、どこのパブに行ってもメニューがほぼ同じなので、次の転職の際に有利
- カジュアルレストランやファインダイニングと比べて、同じスキルでも給料が高めなところが多い。(おそらくドリンクで店自体が利益を上げれているため)
- まかないでチップスが食べ放題(笑)
デメリット
- デメリットはカジュアルレストランとほぼ同じ
- 営業時間が若干カジュアルレストランより長め。週末は昼から夜までずっと営業している店が多い

ファインダイニング
給料の目安:年俸$55,000〜$120,000(役職によって差が大きい)
夜のみ営業の店が多く、昼も営業している場合は週末のみ、という印象です。定休日が固定されている店が多いので、スケジュールは調整しやすい方。ファンクション(特別なパーティー、エンゲージメント、マリッジ、バースデー、会社の懇親会等)が良く行われ、半分貸し切りや全貸し切りも多い。
メリット
- 技術や盛り付けなど、細部までこだわりを凝らした料理に携われるので、スキルアップにつながる
- 3か月に1回ほどメニュー変更があるので、飽きずに仕事に打ち込める
- ファンクションがある場合が多いので、仕事にメリハリがつく
- 職場の立地がいい場所が多いので、仕事中のモチベーションが上がる
デメリット
- 盛り付けや調理が雑になりがちな人には向かない。細かい作業が苦にならないことが前提
- フルタイムの場合、オーバーワークになりがち
- 中途採用はある程度のキャリアが必要(同じファインダイニングの経験がある人)、アプレンティス(見習い新人)は下積みから始めることが多く、技術を習得できるが給料は低め
- Sous Chef(副料理長)やHead Chef(料理長)クラスになると、調理だけでなくメニュー開発に時間が掛かったり(より良いものを求める人が多い傾向)、コスト管理(高級食材が多々使われる傾向が多いので、シーズンの食材確保や仕入れ先管理も行う)も仕事に含まれるため、長時間労働になりやすいです

FIFO(マイニングキャンプ)
FIFOとは「Fly In Fly Out」の略で、都市部から飛行機で内陸部のマイニングサイト(鉱山)まで通勤するスタイルの働き方のことです。西オーストラリアやクイーンズランド内陸部の鉱山地帯で特に多く、鉱山で働く作業員たちの食事を賄うのがこのポジションの仕事になります。
給料の目安:年俸$95,000〜$115,000(時給換算で$40〜$47)
今主流なのは「2週間勤務+1週間休み」というローテーションスタイル。1日の勤務時間は12時間とかなり長めですが、その分、宿泊(アコモデーション)と食事は会社から支給されます。勤務場所が僻地の為マイニングサイトに何もなく、現場に行けば、職場とアコモデーションの往復になります。
飛行機代は基本的には会社負担ですが、年俸が高めに設定されている契約の場合、その分飛行機代が実質的に自己負担に含まれているケースもあるので要注意です。
メリット
- 通常のシェフより稼げるので、短期間でお金を貯めたい人には良い選択
- アコモデーション代を丸ごと節約できるので、自宅を持たない人には向いている(オフの日は友人宅に泊まるor旅行する)
- それほど高いスキルがなくても採用されやすい
デメリット
- 1日12時間の長時間労働が続くので、体力的にきつい人には向いていない
- 家族がいる場合、一緒に過ごせる時間がかなり限られ、実際の休みの初日は現地からの移動で半日〜1日が潰れ、最終日は再びサイトに戻らなければならないため、実質的な休みは丸5日ほどになる
- バルクサイズでの調理が中心になるので、仕事が単調になりやすい。一皿ずつ丁寧に仕上げたい人には向いていない
- マイニングサイトが突如閉鎖することがある(新規の場合資源が見つからなかったり、雨が降りつづき現場作業が出来ない為)。そのため、現場の労働者がマイニングサイトから居なくなり、シェフの仕事が無くなる


時給$40超え!? 他のカテゴリーよりかなり高いね。

その分、長時間労働と、家族や友達と離れる時間の長さとのトレードオフだけどね。短期間でお金を貯めたい人には人気の働き方だよ。
施設(Hospital・Aged Care・Child Care等)
給料の目安:年俸$60,000〜$90,000(時給換算で$30〜$45)
HospitalやAged Care(高齢者介護施設)は1日3食を提供するため、2〜3交代制のシフト。夜勤は時給が上がりやすいのが特徴です。ほとんどの場所でポリスチェックを要求されます。基本オーバーワークはありません。
一方Child Care(保育施設)は平日6時〜15時くらいのシフトが中心で、夜勤はなく月〜金勤務が基本。子どもがいる人にとっては、家庭の予定と合わせやすい働き方です。シェフの資格以外にブルーカード(QLDの場合、他州は名前が違う)を取得する必要があります。給料は若干低めなところが多い。
タウンズビルにはArmy(陸軍)やAir Force(空軍)の基地もあるので、そこでの調理・給仕の仕事もあります。
メリット
- Child Careは平日日勤・夜勤なし・月〜金勤務が基本なので、子どもがいる人には特に向いている
- オーバーワークが発生した場合は、残業代が発生することが多い
- 公共の場所が多いので福利厚生がしっかりしているところが多い
- 栄養管理の要素が強いので、その方面に進みたい人には向いている
デメリット
- 調理方法が単調になりがちで、創作意欲のある人には物足りない
- アレルゲン対応を一人ひとり丁寧に管理する必要があり、気が抜けない

番外編:ホテル勤務
ここまでの6タイプとは少し毛色が違いますが、番外編としてホテル勤務も紹介します。ホテルはカフェ、カジュアルレストラン、パブ、ファインダイニングなど、色々なタイプの飲食施設が同じ建物内に集まっているのが特徴。ルームサービスやバンケット(宴会・ファンクション)部門を持つホテルも多いです。
メリット
- 職場を変えたい場合、ホテルの規定にもよるが部署異動の融通がつきやすく、あまり職場環境を変えたくないけれど違う形態のシェフにチャレンジしたい、という人には挑戦しやすい
- 福利厚生がしっかりしている
- ホテル内では飲食以外の業務も行われているので、休憩時間に違う職種の人との交流が持てる
デメリット
- 配属されるレストランによっては時間が不規則になることがある(朝4時出勤のブレックファースト対応や、深夜までのルームサービス提供+クロージング作業など)
- 会社の規模が大きいので、大小様々な会議があったり、ペーパーワークが多く料理にだけに専念したい人にはストレスが溜まる。
まとめ
こうして並べてみると、同じ「シェフ」という肩書きでも、給料も働き方も本当にバラバラだとあらためて感じます。稼ぎを優先するならファインダイニングの上位職やFIFO、プライベートの時間を優先するならカフェや施設系、というふうに、何を優先したいかで選ぶカテゴリーは変わってくると思います。

結局、どれが一番いいの?

一概には言えないかな。今の自分のライフスタイルに合わせて選ぶのが一番だと思うよ。私自身、これまでいくつかのカテゴリーを渡り歩いてきたから、その時々で「今はこれを優先したい」で選んできた感じ。
これからオーストラリアでシェフとして働きたいと考えている人は、まずは自分が「稼ぎたいのか」「時間がほしいのか」「技術を磨きたいのか」を整理してみると、どのタイプの職場を選ぶべきか見えやすくなると思います。

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